「留学というコンテキストにおいて異言語・異文化接触とは?」 海外の学術雑誌に掲載

本学文学部国際文化学科浅田浩文教授による論文「Experiences of female Chinese university students in Japan: A diary study with a grounded theory approach」が海外の学術雑誌「Australian Journal of Applied Linguistics」に掲載されました。 

研究の概要

本稿では、留学における異言語・異文化接触とは何かという包括的な問いについて、日本の大学に留学している日本語学習者である中国人交換留学生(女性4名)を対象に、1年に亘るDS(Diary Study)から得られた記述データを基に、GTA(Grounded Theory Approach)という手法を用いて分析を試みたものです。その結果、母国の日本語教育及び学習方法が留学体験の規範として働いていること、特に異文化適応理論においては、その軌跡が言語的にも文化的にも相反していること、アイデンティティ交渉理論においては、年齢と性別という帰属要因が大きな影響を及ぼしている様子を明らかにしました。

研究の背景

小学生の頃だったと思いますが、アメリカ留学から帰国した従姉が持ち帰った1枚の写真が目に留まりました。どこか田舎町のパレードを撮影したものだったと思いますが、とにかく色彩豊かで、モノクロの閉鎖的な社会で生活していた当時の私にとっては衝撃的でした。これが異文化(外の世界)に導かれる契機になったと思います。今では様々なメディアを通して膨大な海外の映像を閲覧できますが、その反面、あまり心象に残らないことも事実でしょう。

その後、この記憶の糸が大学時代のバックパッキング、台湾において日本語教育に従事、豪州の学究生活に繋がっていくわけですが、その頃から海外に長期滞在するということ、特に留学というコンテキストにおいて、人は何を心に思い浮かべ、どのような感情を抱くのか、当事者の視点から可視化したいと考えるようになりました。もちろん、属性要因(年齢や母語など)や情意的要因(動機や性格など)、そして滞在先の社会文化的要因等の交互作用によって、留学体験は十人十色かもしれませんが、個々のデータを蓄積することにより、留学とは何かという問いについて包括的な理論の構築が将来的には可能なのではないかと期待しています。

論文情報

【題名】 Experiences of female Chinese university students in Japan: A diary study with a grounded theory approach.
【著者】 Asada, H.
【雑誌名】 Australian Journal of Applied Linguistics, 6(3), 155-175.
【発行日】 2023.12
【DOI】 https://doi.org/10.29140/ajal.v6n3.1148