大学病院の六反田臨床検査技師が福岡県医学検査学会で「最優秀症例報告賞」

大学病院臨床検査部の六反田 茉莉花さんが「第32回福岡県医学検査学会」で発表した演題が最優秀症例報告賞に選ばれました。この学会は、福岡県臨床衛生検査技師会員の知識・技術向上のために毎年行われているもので、受賞者は韓国で開催される「京畿道臨床病理士会学術大会」で発表することとなっています。

演題名:心電図検査を契機にJ波症候群と冠攣縮の合併診断に至った1例

この演題は、ほとんどが予後良好所見とされているJ波(※1)において、心室細動を引き起こす可能性のあるハイリスクなJ波に対する知識を有していたことによりJ波症候群(※2)と冠攣縮(※3)の合併診断に至った症例を報告したもので、その希少性と貢献度を評価されました。

※1)J波:心電図におけるQRSとSTの接合部であるJ点が0.1mV以上上昇し、notchまたはslurとして観察される所見で、健常者にも高率に認められる。

※2)J波症候群:心室細動の発生に関与するJ波を有する疾患群

※3)冠攣縮:冠動脈の異常な収縮により一過性に冠血流を低下させ、心筋虚血を引き起こす。

正常心電図とJ波を有する心電図
正常心電図とJ波を有する心電図

六反田さんは現在、大学病院の臨床検査部で臨床検査技師として勤務し、生理機能検査部門で「心電図検査」や「超音波検査」、「肺機能検査」などを担当しています。

本学の臨床検査技師が勤務する大学病院の臨床検査部および医療センターの臨床検査室では、医師や先輩技師指導のもと研究活動を奨励して個々の能力向上を図っています。また、2024年4月からは医学部医療検査学科が開設されることで、それぞれの医療機関における高精度な検査データを迅速に提供するための優秀な人材を育てていきます。

参考:臨床検査部の研究業績

心電図検査室で
心電図検査室で
生理機能検査部門のスタッフと
生理機能検査部門のスタッフと

六反田さんのコメント

この度は最優秀症例報告賞を頂戴し、さらに韓国で開催される学会の発表演者に推薦していただき大変うれしく思います。今回の受賞は私ひとりの力ではなく、上司である伊藤慎一郎さんをはじめ、諸先生方のお力添えのおかげだと思っています。心から感謝を申し上げるとともに、今後もより一層精進し、業務や研究に取り組んでいきます。

「この研究を進めたきっかけ」

心電図検査とは、心臓の拍動に伴って生じる電気的活動を波形として記録し、その波形から心臓の状態を把握する検査です。今回、心電図検査を実施した患者さんの波形が前回の検査と比較し僅かに変化していることを見逃さず、症状の聴取および追加検査を行ったことにより正しい診断に繋げることができた症例を経験したため報告しました。

久留米大学では、教職員が学術活動を積極的に行っており、経験豊富な上司に指導していただきながら学会発表を行うことができるため研究などに大変取り組みやすい環境です。

「臨床検査技師という仕事について」

臨床検査技師は、医師の指示のもと病気の診断や治療に必要な臨床検査を行う検査のスペシャリストで、医師が診療方針を決定するために必要な情報を提供するという重要な役割を担っています。そのため、正確な臨床検査により病気の予防や早期発見・適切な治療に大きく貢献できることに大変やりがいを感じています。

担当する心電図検査は、検査の件数が多いため迅速かつ正確な検査を心がけています。記録時間が通常12秒であるため、その短い時間の中で些細な変化も見逃さないよう、今後もより一層知識を深めていきたいです。さらに心電図検査以外にもさまざまな検査技術を身に付け、質の高い検査を提供できる臨床検査技師を目指し努力していきます。