子どもの自制心に関する自記式調査票を開発

本学文学部心理学科の浅野 良輔 准教授らの研究グループは、世界中で使われている成人向け自記式セルフコントロール調査票に基づき、子ども向け自記式セルフコントロール調査票を開発しました。本研究成果は、日本社会心理学会の学術誌「社会心理学研究」に2023年10月20日公開されました。

本研究の背景・概要

自制心(セルフコントロール)は、生涯賃金や学業成績、対人関係、健康、問題行動の少なさなど人生の成功に関わる能力として、さまざまなメディアで注目されています。子どものセルフコントロールを子ども自身に尋ねることはこの分野の研究をより活性化させる可能性を秘めているものの、そうした方法は確立されていません。

本研究グループでは、世界中で使われている成人向け自記式セルフコントロール調査票に基づき、子ども向け自記式セルフコントロール調査票(下表)を開発し、小中学生1,289名(小学3~6年生633名、中学1~2年生656名)から回答を得ました。その結果、この調査票の得点は男子よりも女子において高く、小学3~6年生よりも中学1~2年生において低くなっていました。また、この調査票の得点が高い小中学生ほど、翌年度の問題行動(飲酒や喫煙、暴力など)が少ない傾向にありました。これらの知見は、これまで明らかにされてきた子どものセルフコントロールの特徴と一致しており、本研究グループが作成した子ども向け自記式セルフコントロール調査票の妥当性を科学的に証明するものです。

調査票

今後期待されること

・本研究の成果は、セルフコントロールの生涯発達や予測因子、結果の解明につながることが期待されます。

浅野准教授のコメント「本論文を出発点として、セルフコントロールをめぐる研究や実践に貢献していきたいです」

論文情報

【雑誌名】社会心理学研究

【タイトル】子ども用セルフコントロール尺度の作成と妥当化:小中学生を対象とした検証
 DOI:https://doi.org/10.14966/jssp.2022-006
 掲載日:2023年10月20日

【著者名】浅野 良輔(久留米大学文学部心理学科)、吉澤 寛之(岐阜大学大学院教育学研究科)、松下 光次郎(岐阜大学大学院工学研究科)、笹竹 佑太(岐阜大学大学院工学研究科)、酒井 翔(岐阜大学大学院工学研究科)、吉田 琢哉(岐阜聖徳学園大学教育学部)